ハイドロポニックス 第39巻 第1号 要約
特集:燃油削減技術の現状と課題,未来の展望
大橋 雄太
温室栽培において使用される一次エネルギーの大部分は,冬季の暖房によるものである.また,多くの温室では,暖房に燃焼式暖房機が使用されており,A重油などの化石燃料を燃焼させることで,熱を得ている.近年のエネルギー費の高騰のため,燃油使用量の削減は,経営収支向上のために必須である.温室栽培において,燃油使用量を削減するためには,大きく分けて温室の断熱性の向上とヒートポンプの利用が効果的である.本稿では,上記の燃油削減技術とそのメカニズムについて紹介する.
特集:温室構造からみた断熱に関する技術
河合 幹裕
温室は保温を目的として発達してきた.現在,全施設面積の約44%が暖房設備を備えているが,暖房には設置費以外にも燃料代がかかる.燃料使用量の削減は重要課題である.1970年代に始まったオイルショックにより,日本の施設園芸における暖房用石油節約技術は世界トップクラスまで進展したが,その技術は現在,忘れられつつある.そこで,暖房費削減のために以前からの技術を改めて見直し,断熱性を向上させる取り組みを振り返る.
特集:東京インキ㈱ 高機能内張りカーテン『エナジーシリーズ』
木戸 康晴
当社の多層断熱被覆資材(布団資材)「エナジーキーパー」の普及拡大を図る取り組みが「みどりの食料システム法」に基づき、農林水産省の認定を受けました。燃油高騰に伴い、従来の菌床椎茸への使用事例から、果菜類(大葉、ピーマン、トマト、キュウリ、イチゴ)、花卉類(キク)、果実類(マンゴー)への導入も増加傾向。
内外のニュース:園芸学会令和7年度春季大会報告
古野 伸典
令和7年3月20日(木)から21日(金)にかけて園芸学会春季大会が神奈川県藤沢市の日本大学生物資源学部キャンパスにて開催された。本稿では報告された中で養液栽培研究会の会員各位が興味をもちそうな発表を抜粋して紹介する。
内外のニュース:GREENSYS 2025に参加して
鳥越 胡美
スペインで行われたGREENSYS 2025の口頭、ポスター発表および現地視察についての内容と感想をまとめました。
事例紹介:あかい菜園株式会社の取り組み
常盤 秀夫
福島県いわき市でトマトの生産を行っている「あかい菜園株式会社」について紹介する.
研究の紹介:イチゴの訪花昆虫としてヒロズキンバエ活動を把握するソフトウェアの開発
安場 健一郎
イチゴの訪花昆虫としてのヒロズキンバエの活動を把握するソフトウェアの開発を行った.開発したソフトウェアはイチゴの花を長期間圃場で撮影したビデオをAIを活用してイチゴの花への訪花時間を解析できる.人間が目視で実施するよりも圧倒的に高速に解析することが可能である.
連載~誰でも使えるAI活用~特集「AI活用の第1歩」:第1回「物体検知AIを使って動画から果実を数える」第2回「きっとできる!YOLOをColabで動かしてみる―物体検知AIをブラウザで気軽に体験」
後藤 勲
果実を動画から数えるには、時間的なつながりを考慮した処理が必要となる。本稿では、物体検知AI「YOLO」と独自の計数アルゴリズムを組み合わせて、パプリカの果実を動画から計数した事例を紹介する。さらに、Google Colaboratory上でYOLOを誰でも試せる方法についても簡単に解説する。AIを用いた省力化技術を、手軽に体験・応用できる選択肢として提示したい。
連載やさしく解説!:第十一回「遺伝子と育種」②」
福田 直也
植物が生きる仕組みを学ぶ植物生理学を連載記事として解説する.第11回は,遺伝子の突然変異からどのように新しい品種を開発するのか概説する.
質疑応答:日射比例かん水を導入するときの注意点は?
藤尾 拓也
日射比例制御による効率的なかん水について、留意点や導入、運用について回答したもの。
海外文献の紹介:活動芽と異なる節数を持つ匍匐茎を用いたハスの増殖
山崎 彩
増殖時の挿し穂の節数が植物の成長と開花に及ぼす影響を調査した. 結果,2・3 節挿し穂間で生育に有意な差はなく,慣行より短い 2 節挿し穂利用はハスの苗生産において十分なコスト削減効果あった.
海外文献の紹介:ジャガイモのミニチューバー⽣産における養液栽培の利⽤
山崎 彩
ミニチューバー生産における固形培地耕と噴霧耕の水生産性最適化を目的とした.結果,水生産性と収量の観点から噴霧耕の方が固形培地耕より適している.
