培養液について
伊達修一(京都府立大学大学院農学研究科)
培養液とは
植物が成長するために必要な養分(必須元素)を吸収に適した濃度で水に溶かしたもので,植物に継続的に与えられる.栽培する作物の種類によって、また目標とする収穫物の品質を得るために様々な種類の培養液(表;(社)日本施設園芸協会編「養液栽培の新マニュアル」,誠文堂新交社)が存在する.
培養液に溶けている養分
基本的にはイオンの状態で存在し,これが植物に吸収される.
- 多量要素
- 窒素;N(硝酸態;NO3-Nとアンモニア態;NH4-Nがあり,養液栽培ではNO3-Nを主たる窒素源とする),リン;P(リン酸態;PO4-P),カリウム;K,カルシウム;Ca,マグネシウム;Mg,硫黄;S(硫酸態;SO4-S).
(炭素;C,酸素;O2,水素;H2は主に空気中の炭酸ガスと根から吸収した水の形で供給される.) - 微量要素
- 鉄;Fe,マンガン;Mn,ホウ素;B,銅;Cu,亜鉛;Zn,モリブデン;Mo
その他植物によっては,ケイ素;Si,塩素;Cl,アルミニウム;Al,ナトリウム;Na,ニッケル;Niなどを必要とするものもある.
「様々な種類の培養液」とは具体的に何が違うか
各養分の濃度,pH(水素イオン濃度),EC(電気伝導度;トータルの養分濃度の大まかな指標)など.「培養液管理」とはこれらの要因をコントロールすることを言う.「培養液管理」は養液栽培特有の技術であり,気温や湿度,光条件などの「環境制御」と並んで最も重要なものである.
培養液の単位
1Lあたりに溶けているイオンのグラム当量(equivalent;e),すなわちe/Lという単位を使う.養液栽培で使用する濃度は低いので,通常は数字を1000倍して1Lあたりのミリグラム当量(mili equivalent;me)すなわちme/Lという単位を使う.これはあるイオンの形で1Lの培養液中に含まれる電荷の量を表す.このような単位を使うのは,植物は無機イオンの形で養分を吸収することに加えて,現在の主流を占めている培養液管理法の指標となるEC(電気伝導度)がイオンのグラム当量濃度にほぼ比例するということで,培養液管理に最も都合が良いからである.イオンのグラム当量濃度の計算方法は以下のようになる.
グラム当量濃度(me/L)=イオンのモル濃度(mmol/L)×イオンの価数
となる.