日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

オランダにおける研究生活 (1)

通信員 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
東出忠桐

筆者は、農研機構の長期在外研究員として2007年1月より2008年4月までオランダのワーゲニンゲンURにおいて施設トマトに関する研究を行っている。ワーゲニンゲンURはワーゲニンゲン大学といくつもの研究所から構成され、研究分野ごとに農業技術及び食品科学グループ、動物科学グループ、環境科学グループ、植物科学グループ、社会科学グループの5つに分けられている。この中で筆者が所属しているのは、植物科学グループの施設園芸生産グループである。

完全看護の実験温室

現在、筆者はワーゲニンゲン大の実験温室においてトマトの栽培試験を行っている。この実験温室は面積2haのフェンロー温室で、内部には、遺伝子組み換え作物等を扱う完全閉鎖系室、ロックウール栽培室、エブアンドフロー室および土耕室の4種類の小室が100以上ある。養液栽培の培養液は調整室で作成され各小室に自動的に供給される。各小室の環境設定はコンピュータによって小室ごとに設定でき、気象データは学内のコンピュータから自由に取得できる。この実験温室は特定の研究グループに所属するのではなく、ユニファームという組織に属しており、温室内では様々なグループの研究者、学生が実験を行っている。

ユニファームは研究者からの依頼を受けて区画を割り振るだけでなく、実験データ取得以外のほとんどの管理作業を行う。研究者は種子と栽植計画をわたせば、播種~育苗~定植まで何もする必要がない。定植後も誘引、芽かき等の作業や給液管理もすべて行ってもらえ、試験終了後の片付けの必要もない。いわば、完全看護の施設である。ただし、このため温室で試験を行うにはかなり高額な研究費を支払わなければならない。

完全看護の温室には勤務時間(8:00~17:00)以外は入ることができない。筆者は、最初、それを知らずに17:00すぎまで仕事をしていて叱られてしまった。休日も入ることはできず、予約した場合のみ土曜の午前中だけ入室が許可される。また、作物に病気が発生した場合、日本ではすぐに対処できるが、予定にない作業はすぐにやってもらえない場合もある。

客員研究員である筆者の場合は、仕事を手伝ってもらうスタッフがいないため、実験データの取得はすべて自分でやらなければならない。8:00から17:00まで休憩なしで調査、という日もしばしばである。予断であるが、実験温室の休憩室には日本サッカー協会のたてが飾ってあるが、由来は不明である。この温室はまだまだ十分に使えるが、来年には取り壊されることになっており、現在、新温室を建設中である。

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