日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第30巻 第1号 要約

特集:培養液の誕生と今

寺林 敏

養液栽培における培養液の歴史をたどる.1930年代に植物の生育に必要な微量元素が発見され,現代使用されている培養液に近いホーグランド・アルノン液が1938年に処方された.その後,我が国においても,昭和36年頃に山崎・堀により園試処方が,さらにn/wの考え方をもとにした山崎処方が発表された.これらの培養液については,キレート鉄の使用によって培養液中のFe供給を安定化させることに成功した.培養液の管理はECを基準とした濃度管理が一般的であるが,量管理という新しい概念が,1991年に景山らによって発表されている.

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特集:多量要素と微量要素について

和田 光生

1.必須元素とは,2.多量要素と微量要素,3.肥料としての必須元素,4.肥料取締法における肥料,5.各元素の概説,の各項目について,独自の視点から解説する.養液栽培をする上で,知っておいて損は無いことを中心にまとめている.

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特集:培養液処方の特徴について

伊達 修一

園試処方とは,植物体に含まれる無機養分含量を測定することにより,栽培期間中に吸収した各無機要素の無機養分比率を求め,その比率を各無機養分の培養液中存在比率としたものである.一方n/wの考え方は,培養液の分析によって求められた植物による各元素の吸収量を,その際吸収した水の量で除して求めたみかけの養分吸収濃度(n/w)を基に,元素別の処方濃度を割り出したものである.また量管理は,植物の生育に必要な各元素の吸収量を算出した上で,その必要量を一定期間の間に供給するという考え方で肥培管理を行うものである.

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特集:養液栽培で使用する原水の特徴と各種対策について

千賀 雅典

養液栽培において使用する原水の影響は大きく,水質によっては生育不良の発生や点滴チューブの目詰まり,給液機器故障の原因となる事がある.養液栽培設備の設計・販売を行っている中で,導入現場での事例を挙げながら養液栽培で使用する原水の特徴と対策について紹介する.

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特集:いまさらきけない養液栽培ECとpHについて

中野 明正

養液栽培における基礎的な事項について解説.特にECとpH測定の意義や,原理につて,わかりやすく解説した.作物に適するECやpHの範囲や,よく使われるセンサーの管理方法などの注意点についても解説した.

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事例紹介:次代の農業を担う人材育成の拠点「高知県立農業担い手育成センター」

山本 正志

高知県では,農業を魅力ある産業と位置づけ,地域で暮らし稼げる農業を目指し、年間農業産出額1,060億円を目標とし,これを達成するために「新規就農者年間320名の確保」と「環境制御技術の導入による増収増益および規模拡大」に取り組んでいる.高知県立農業担い手育成センターはこの2つの取り組みの一翼を担い,次代の新たな人材育成と,すでに経営を営んでいる農業者への高度な環境制御技術等の実証展示施設として,平成26年4月に四万十町に設立された.設置後2年が経過し,その取り組み内容を紹介する.

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事例紹介:どうする?「トマト屋のこれから」

竹田陽一郎

阪神大震災以降,販路を直販と直接取引に切り替え,「商品」としてのトマトをどう育てるか苦労した.近年,トマト栽培理論は大変革され,増収や安定生産がもたらされたが,その栽培理論はオランダ製でさらに10年前の情報であることが問題である.オランダでは生産者が日々の改善と情報共有により今日の生産性を築いたといえるが,日本はそれに追いつけるだろうか.新時代のトマト生産には,見合った設備が必要で,補助金の採択要件等も検討して頂きたい.候補地選定も重要で最適立地は低コストにつながる.選定のためのデータ拡充にも期待する.

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事例紹介:次世代が残したいと思う農林水産業の実現に向けて

志賀口 裕輔

使われなくなり荒れ果てた耕作放棄地、障がいを持つ子供たちの就労、高齢者の生きがい、これらを関連付け、さらには地域活性化に繋げていきたいという気持ちから会社を設立しました。そのためにベストマッチしたのがトマトのDトレイ低段通年栽培でした。通年栽培への技術を高めるために今立ちはだかる壁は「培地」でありこれを克服しつつ、同時にビジネスとして自社ブランド「アップルスター」の価値を上げていきたい思います。

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研究の紹介:植物工場三重実証拠点の概要と植物工場における重要な業務等

谷本 恵美

三重県農業研究所が運営する植物工場三重実証拠点は,植物工場関連技術の実証および人材育成を行っている.約20aの施設でトマト・イチゴの生産を行うなかで,高度環境制御による栽培技術のみならず,植物工場運営の面でも多くの知見が得られた.植物工場を運営するうえで日常的に行う業務である「データの収集・分析・活用」,「環境制御機器等の保守」,「役割分担と人材育成」は,他の植物工場においても重要である.

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研究の紹介:養液栽培による薬用植物の効率生産

彦坂 晶子

大阪府立大学での「大会講演要旨」を基に,薬用植物生産の現状,養液栽培の事例,薬用植物生産の留意点,養液栽培による薬用成分の高濃度化,今後の展望について紹介した.著者が実施している具体的な研究事例として,甘草,ニホンハッカ,スイカズラ,アカジソなどを紹介し,養液栽培で安定した地下部環境を維持することや,積極的に培養液温度を変える処理などを行うことで,薬用植物の生育および薬用成分の高濃度化に適した環境条件を探索できることを紹介した.

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研究の紹介:トマトの葉瘤症状について

淨閑 正史

近年、閉鎖型苗生産システムを用いたトマト育苗において、小葉にカルスなどのこぶが発生するとの報告がある。この症状はintumescenceと呼ばれる生理障害で、湿度との関係が強く言われている。そのため、高湿度下で養生する接ぎ木ではintumescenceの被害が甚大とのを観察したところ、気孔を介したガス交換がintumescence発生に関与しているためと考えられた。

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研究の紹介:キュウリの養液栽培におけるピシウム病対策としてのカボチャ台木の利用

窪田 昌春

農研機構の植物工場で噴霧耕により養液栽培されていたキュウリ自根苗に発生した萎凋・立ち枯れは、ピシウム菌によるものと診断された。この病害はカボチャ台木(品種:バトラー)への接ぎ木キュウリ苗では発生しない。本病に対して抵抗性のキュウリ品種は認められなかったが、多くの台木カボチャ品種は発病しない。冠水などによって、接ぎ木部が病原菌と接触した場合には、キュウリ穂木部から腐敗して発病する。

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新連載:ホープが語る!未来のハイドロポニックス 日本海側地域の養液栽培・施設園芸の発展を目指して

遠藤 昌伸

冬季低温寡日照条件である日本海側地域における養液栽培・施設園芸の発展を目指して,これまで行ってきた研究「トマト低段・閉鎖型養液栽培における日射量を指標とする養分供給の検討」,「イチゴ‘越後姫’栽培における地中熱利用によるクラウン加温の検討」の内容についてご紹介する.

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新製品の紹介:まくりーんシステムで水をきれいに

岡本 夏未

本システムは東レ(株)のUF膜をシステム化しており,細菌レベルでの水の浄化を可能にしている.養液栽培に水は必要不可欠であるが,その中にゴミや泥が多いと潅水時に使用するドリッパー等の詰まる危険性が高まる.また,水の中には目に見えない植物病原菌が数多く潜んでいる.それらを改善する目的として本システムは導入が開始されており,また今後は排液循環を目指して開発が進んでいる.

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新製品の紹介:農業クラウドサービス「アグリネット」

和久井 賢

ネポン株式会社が提供する農業クラウドサービス「アグリネット」は、ハウス環境の見える化(モニタリング・警報)や遠隔制御、グループ内のコミュニケーションなどの機能で、収量・品質向上、生産ノウハウの蓄積、省エネ・省力化の取り組みをサポートする。PC・スマホ対応で、ハウス内環境の変化の流れを数値やグラフ表示で感覚的に把握できるほか、環境異常についても警報メールでリスクを回避できる(見える化)。また遠隔制御については、「複合環境制御」と「炭酸ガス制御」を組み合わせて活用可能。グループ内で栽培に必要な最新情報の共有やスケジュール管理など、コミュニケーション機能も充実しているのが特徴である。

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連載:養液栽培で発生する病気の基礎知識 (8)かいよう病菌

渡辺 秀樹

第8回は、トマトで被害が発生しているかいよう病菌の発生生態や養液栽培における伝染環、防除対策について紹介する。

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