ハイドロポニックス 第24巻 第2号 要約
巻頭言:はたらく雑誌ハイドロポニックス
和田光生
植物工場が盛り上がりを見せる中で,設備や装置に注目が集まるが,栽培技術は軽視されがちである.ものや人に優劣を付けたりそれを批判したりそんなことは置いといて,この期に色んな分野の多くの人が大いに智恵を出し合ってぜひ成功させて欲しいものである.端(はた)が楽になるから働くというらしい.自分もそうでありたいと思うし,ハイドロポニックスもはたらく雑誌であって欲しい.
内外のニュース:施設園芸・植物工場展2010(GPEC)に参加して
品部京子
2010年7月21日(水)~23日(金)に,東京ビックサイトにおいて,施設園芸・植物工場展2010(GPEC)が開催された(主催:(社)日本施設園芸協会).今回のGPEC2010は‘世界を視野に強い施設園芸を目指そう~「ここにある」あなたのハウス(植物工場)で儲けるヒント~’というテーマが掲げられており,出展ブース数は約100,入場者は計35,137人であった.施設園芸技術の高度化がメインテーマとなっており,関連する特別講演や新技術の紹介がされていた.
内外のニュース:第11回養液栽培技術研修会「養液栽培夏の学校2010」
牧野謙太
2010年8月9日~13日にかけて筑波大学で行われた夏の学校の様子を、スケジュールに沿って紹介し、学生アルバイトとして研修会に参加して得た経験談を語っている。
内外のニュース:園芸学会秋季大会に参加して
和田瑞紀
平成22年度園芸学会秋季大会にて多くの研究発表が行われた。養液栽培を主とする研究では、培地の種類や施肥法の検討、周年栽培の可能性、防根吸水ひもや局所加温法などを用いた新たな栽培方法、培地や排液の再利用など幅広い報告があった。日射や温度などの環境条件と生育の関係を調査した研究も数多く、養液栽培の高度な制御技術を有効に利用するためにも環境条件が及ぼす影響に関する検討は今後も必要だろう。
内外のニュース:第67回日本養液栽培研究会・北海道大会
奥田晋一
平成22年10月7日~8日に第67回日本養液栽培研究会・北海道大会が「これからどう取り組む ビジネスとしての養液栽培」をテーマに開催された.高収益と安定生産が期待できる養液栽培への関心が高まる中,道内はもとより,道外・海外から174名の参加があった.
7日は北広島市の札幌北広島クラッセホテルにおいて,養液栽培入門講座,研究会,懇親会,分科会が開催され,8日は現地見学会が行われ,盛会裡に終了した.
内外のニュース:ハイドロポニックス研究会in滋賀に参加して
森 雅也
2010年6月26日に池田英男先生による「植物工場ビジネスと海外最新情報」の出前講義、27日に滋賀県の南出農園の視察というスケジュールで行われ、23名の生産者が集まった。出前講義と視察の詳細なレポートに加え、2日間の研究会を通じて感じた筆者の率直な感想が紹介されている。
内外のニュース:第28回国際園芸学会
本会運営委員
2010年8月22日~27日、ポルトガルのリスボンにて行われた国際園芸学会の概要と、養液栽培関連の研究について紹介され、日本の植物工場に関する研究発表に対する関心が高かった。また現地視察に参加した著者による視察先のレポートが紹介されている。
事例紹介:農業での最新IT技術の活用に挑戦!
加藤百合子
日本の農業をオープンにすべく農業情報を扱うサイト「わいファーム」と「アグリグラフジャパン」を立ち上げた。農業とITはまだよい相性とは言えないが、農業を取りまく環境の変化により数年と経たぬうちにIT活用が浸透するだろう。そして、若者から敬遠され、儲からないとされていた産業がハイテクかつグローバルで、カッコいい業界へと発展していくことが期待できる。
事例紹介:養液栽培を核にしたハーブの契約栽培
高橋晴夫
千葉県旭市でハーブ類を専門的に生産している有限会社高橋農園の概要が紹介されている。脱サラして家業の施設園芸を継承する形で就農した著者は、土耕で家族経営の施設園芸の限界を感じ、葉菜類の水耕栽培、ハーブ類の栽培を取り入れ、ヱスビー食品との契約栽培をはじめ、現在では土耕と水耕圃場あわせて、1.3haで栽培を行っている。そんな高橋農園の経営と今後の展望が紹介されている。
事例紹介:養液栽培の導入で産地を活性化~宮城県石巻地域の施設園芸~
小野寺和博
宮城県の施設園芸の概要と養液栽培の現状が紹介され、特に超大規模施設園芸団地「石巻市蛇田園芸団地」は、国内最大規模の3.4haの(株)イチゴランド石巻と1.1haのサントマト石巻、1.7haのベジパル石巻(イチゴ、トマト、花卉)での周年生産を行っており、これからの大規模農業のモデル地区として必見である。
事例紹介:バトマト一段密植養液栽培システムの紹介~ 次世代型生産システムによる企業的経営へ ~
JA全農
収量増加と品質向上と安定出荷を目指したトマトの一段密植養液栽培システムの概要について紹介されている。また、導入に当たっての指針として苗生産、品種選定、労務管理についても紹介されており、普及に向けた準備が整っている。是非一読されたい。
研究の紹介:特別寄稿 過去の研究に何を学ぶのか
髙倉 直
著者が80年代前半に出会ったアクアポニックスやエアロポニックス。その奇抜性がマスコミ受けし、いまだに話題に取り上げられる現状に、過去の研究や実施例の調査の必要性を指摘し、筆者の経験に基づく提言は、これからの研究者にとって貴重である。
研究の紹介:Cの動態に注目した高生産性施設環境調節技術の開発
安 東赫
著者ら研究グループ(大阪府大,筑波大,野茶研,宮城県,茨城県,㈱誠和,㈱大塚化学)では,新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「Cの動態に注目した高生産性施設環境調節技術の開発」研究を行っている.主な内容は,CO2,気温,地温,飽差,光環境,ソース・シンク関係など,光合成や炭水化物の転流に影響する要因について生産性向上のための好適条件と調節法について検討している.本稿では,研究内容の一部を紹介する.
研究の紹介:長期どりで安定多収を可能にするトマトの独立ポット耕栽培
安田雅晴
トマトの独立ポット耕は、高さ50cmのベンチ上でトマトを1株毎に不織布製ポットで栽培することにより、土壌病害の拡散を抑制した少量培地耕である。本システムは、長期多段作型においても、着果が安定し多収を得ることができる。その内容を紹介する。
連載~オランダトマトの多収化を探る~:葉面積と受光量
東出忠桐
植物上の光を100%とし,そこから,植物体の下の光強度を差し引いたものが植物体の受光量となる.植物群落内の光強度を測ると,葉面積指数(LAI)の増加に伴って光強度は指数的に減衰する.この関係からいえることは,LAIが小さい場合には葉面積の増加に伴って受光量は大きく増加するが,LAIが大きい場合には葉面積増加による受光量の増加はわずかということである.これらから,生産場面における重要な2つのポイントが示される.
新製品紹介:大塚ミテルンについて
緒方雅彦
大塚ミテルンはインターネット型の環境制御モニタリングシステムである。多機能かつ、簡単設置、簡単運用をコンセプトとして開発された。その機能を紹介する。
新製品紹介:植物工場用LED照明パネル
佐藤 浩
高性能、低価格化が加速された自動車用白色LEDを、これまでに植物育成用の人工光源ランプの開発を進めた知見を集約し、防水構造を採用し、信頼性の高い植物工場用LED照明パネルを開発した。その性能や特徴を紹介する。
新製品紹介:現場の声を生かした改良型育苗用ウレタンマット
牧野昌美
水耕栽培における「育苗用培地ウレタンマット」の改良品を紹介する.現場の声を生かした育苗用ウレタンマットは,生産者から常に求められてきた.実際の生産現場から発せられた要望を元に改良開発された製品の,開発経緯と特長などについて比較テスト写真などを交えながら紹介をする.
特集〜養液栽培ビジネスをサポートする認証制度〜:GAPとは?
篠原 温
GAPの取り組みが普及啓蒙からやって当たり前の時代に突入している。その基本的な考え方をわかりやすく紹介し、GAP実践によるメリットをGAP導入後の効果に関するデータを示して解説している。
特集〜養液栽培ビジネスをサポートする認証制度〜:MPS:園芸産業総合認証とは?-経験による農業からデータによる農業へ
松島義幸
MPSは「花き産業環境認証プログラム」の略号で,1990年にオランダの花き生産者によってスタートし,現在では世界40カ国、4800団体が加盟する国際認証となっている.環境負荷の低減を目的として生産から流通まで一貫した世界標準のシステムであるMPSは,経験による農業からデータによる農業への手助けになる.このことが農業界を定性的なものから定量的なものへと転換するツールとなり,日本の農業全体の体質改善や効率化に大きく寄与する可能性を秘めている.そんなMPSの概要を紹介する.
特集〜養液栽培ビジネスをサポートする認証制度〜:GAPの現場導入事例
栗田洋蔵
食の安全は今や当然のこととしてとらえられているが、果たして現状をみると「イメージだけの安心」でしかないと考える。「根拠のある安全」をどう実現するかが必要で、それを実現できる認証制度がGAPであると考えている。本稿では、JGAPの指針と位置づけ、さらに具体的な導入の事例を示して紹介した。
特集〜養液栽培ビジネスをサポートする認証制度〜:MPSの現場導入事例
大西 隆
セントラルローズは、2008年にMPS参加認証を全国で始めて取得し、生産を行っている。その導入の経緯や取り組み状況について紹介する。
特集〜養液栽培ビジネスをサポートする認証制度〜:「全農安心システム」の取り組みについて~安全な国産農畜産物を安心して食べる~
村林 道
全農安心システムとは、生産者と消費者を商品と情報でつなぐために、生産・流通・保管・加工・販売などに関わる情報が連結する仕組みづくりである。そんな仕組みの真の目的と情報管理について具体的に紹介され、今後の消費動向にあわせた仕組みづくりの方向性についての展望が紹介されている。
特集〜養液栽培ビジネスをサポートする認証制度〜:流通サイドからみた認証制度
岡村 隆
食品の安全性の確保は消費者の最大の関心事である.青果物を販売する最大のチャネルである量販店は,その消費者の要求に対して,GAPの手法をベースに定めた基準により自主認証した青果物に自社ブランドを付けて販売商品の安全を担保している.自社ブランド商品は契約による新たな青果物調達ルートの確保と産地の囲い込みができ,他社との差別化が図れる商品であり,その拡充が量販店の青果部門の最重要課題となっている.
連載ーやさしい環境計測ー:第3回 光の計測 放射と日射
岩崎泰永
作物の栽培でもっとも重要な要素である光を上手に使うことを達成するために必要な、光を計測するためのノウハウをわかりやすく紹介している。
質疑応答:JGAPの指導員ってあるそうですが何ですか?
佐野公彦
JGAP指導員とは,日本GAP協会が認定したJGAPの導入指導やコンサルティング活動を行う者です,JGAP指導員になるには,日本GAP協会が開催するJGAP指導員基礎研修を受講し,試験に合格する必要があります.ここでは,JGAP指導員基礎研修とJGAP指導員の活動内容について説明してあります.
書評:「植物工場ビジネス 低コストなら個人でもできる
岩崎泰永
施設園芸分野でもっともホットなキーワードである「植物工場」。技術が集約されたこの工場をビジネスとしてどのように取り組むべきかを著者の豊富な研究実績に基づいてわかりやすく紹介した一冊である。