日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第23巻 第2号 要約

巻頭言:治に居て乱を忘れず!の心得

切岩祥和

2009年8月11日に,駿河湾を震源とするM6.5の地震が発生した.一次災害は比較的小さかったが,防災意識を高める必要を感じた.養液栽培においても,万が一への備えを怠らない心構えが重要である.養液栽培がビジネスの種として注目されているが,リスク対策のマニュアル作成が必要であろう.

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特別寄稿:忘れられない言葉

宇田川 雄二

日本養液栽培研究会からは,10周年記念誌の編集を最後に事実上退いたが,設立当時から多くの本当にすばらしい人々とめぐり会うことができた.また,その方々から,多くの学ぶべきことを教えられた.それが私を作り,現在の私を存在せしめている.そこで,この場を借りて,本会に係わった先生方から教えられたことを紹介したい.それは,教えられたことは私だけに有効ではなく,これを読んでいただく本会会員にもきっと役立つと信じるからである.

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内外のニュース:第65回日本養液栽培研究会・大分大会について

大分大会実行委員会

平成21年11月12日~13日に第65回日本養液栽培研究会・大分大会が別府市で開催され,150名余りの参加があった.12日はホテル清風の会場で,研究会,懇親会と分科会が行われ,同時に5社の企業展示が併設された.13日の見学会では,JAおおいたみつば部会の共同育苗施設,㈲メルヘンローズ,㈱走るトマトの3施設を訪問した.本大会では定員をオーバーする盛況ぶりで,養液栽培に対する期待の高まりを感じるものであった.

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内外のニュース:第10回養液栽培技術研修会「養液栽培夏の学校2009」

岩崎智優・金谷早紀

平成21年8月24~28日の5日間,京都府立大学において第10回養液栽培夏の学校が開催された.今回は,企業,農家,農業関連の研究員および普及員の方など,計36名の方が参加された.「初級編」ということで,養液栽培の紹介,装置の仕組み,専門用語の解説から,実験室での実習,栽培装置の組み立て,現地見学会など,多岐にわたる貴重な経験ができた.

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内外のニュース:日本生物環境工学会2009年福岡大会

松田 怜

9月に行われた標記大会では,「知能的太陽光植物工場」「食と農への生物環境工学の取り組み -女性研究者が育む科学への誘い-」などのシンポジウムの他,人工光植物工場における有用物質生産,省エネルギ植物生産システム,植物成育モデル,画像計測による植物機能診断,太陽光植物工場における物質生産などに関する発表があった.昨今の植物工場事業を受けて,太陽光・人工光植物工場に関連する話題が目立った.

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内外のニュース:日本養液栽培研究会第7回海外視察研修に参加して

池田 敬

平成21年10月13から22日に実施された日本養液栽培研究会第7回海外視察研修(オランダ・スペイン)に参加したので,その概要を報告する。

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内外のニュース:平成21年度園芸学会秋季大会報告

小松芳則

9月26,27日に秋田大学手形キャンパスにて平成21年度園芸学会秋季大会が行われた.養液栽培関連の発表は,口頭発表43件,ポスター発表22件であった.そのなかで今大会は,近年の原油価格高騰による冷暖房コストの増加を背景として,ヒートポンプの利用または局所冷却・加温などによる収穫期の拡大や生長促進に関する研究が多くみられたので代表的な発表について報告する.

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内外のニュース:平成21年度野菜茶業課題別研究会「果菜類の多収生産技術の現状と課題」

礒崎真英

三重県津市で10月28~29日に開催された研究会は,150名を超える参加があり,盛況であった.光合成と野菜生産に関する基礎的なお話から,施設内の環境制御の最新情報,生産現場での取り組みなど,大変興味深い内容であった.

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内外のニュース:MKVドリームの農業ハイテク事業 「栽培システムを中心として」

土屋 和

MKVドリームは平成21年7月に発足した三菱樹脂グループの農業資材事業会社で,農業ハイテク事業部では栽培システムを中心に,長期展張フィルムや肥料,培地等の資機材の販売を行っている.独自の養液栽培システムや閉鎖型苗生産システムの開発を行い,果菜,葉菜,切り花,育苗の各分野に展開をしている.それらには「短期多回転栽培と簡易な栽培技術」,「育苗と本圃生産の一貫体系」,「光環境を重視した整枝法」といった特徴がある.

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内外のニュース:日東紡のロックウール事業について

大野雅史

このたび弊社はグロダンと独占契約を締結し,輸入総販売元となった.グロダン製品は弊社品と仕様やサイズが多少異なるが,そのまま置き換えて使用でき,水の再浸透性など性能面で優れた点もある.弊社は今後,植物工場の取り組みを開始し,また使用済みロックウールのリサイクルも再開する予定である.さらに弊社はグロダンとの提携を機に,お客様に栽培ノウハウの提供も行ない,収益向上のお役に立っていきたいと考えている.

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内外のニュース:アグロ・イノベーション2009

高野麻美

2009年11月25~27日の3日間,幕張メッセにおいて,アグロ・イノベーション2009が開催された.本会も例年通り出展し,本会の趣旨や活動内容などを紹介,入会案内,夏の学校や出前講義,次回以降の研究会の案内などを配布した.「環境」や「省エネ」がキーワードという印象を受けた.「農業をより身近なものに」という動きも感じられた.植物工場をはじめとした最新技術の展示も目を引いた.

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事例紹介:アクアベンチ栽培によるアレンジメントアスターの周年栽培

嶋本久二

アレンジメントアスターは,洋花アレンジや花束用,仏花用として利用ができ,需要の安定している切り花である.しかし,アレロパシーによる連作障害やフザリウムによる病害によって,固定された産地は形成されなかった.ここでは,粒状アクアフォームを培地とした養液栽培の導入によって,年間3.5回転の栽培を実践されている,福岡県田川市の佐野氏の事例を紹介する.

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事例紹介:“アメーラ”新たなる展開 (株)サンファーマーズの挑戦

高橋章夫

糖度の高い甘いトマトのブランドを確立した“アメーラ”.その秘訣は,高品質な果実を安定的に供給することだという.冬でも温暖という静岡の地の利を生かした生産・販売戦略では,夏の収量低下を補うことはできない.そこで,軽井沢での新しい挑戦が始まる.これにより高糖度トマト“アメーラ”が安定して供給でき,ますますその地位を固めていく.その取り組みについて紹介する.

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研究の紹介:トマトの寒締め栽培

鈴木健策

冬の寒さを利用して施設栽培のホウレンソウ,コマツナなど葉菜類の糖度や栄養価を高める栽培法,いわゆる寒締め栽培が北東北地域を中心に普及している.最近,この寒締め栽培の手法を応用することで,甘くておいしいトマトを作れることがわかってきた.ここでは,トマトの「寒締め栽培」つまり「根域冷却栽培」について,ホウレンソウの寒締め栽培やトマトの塩ストレス栽培と比較しながら紹介する.

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研究の紹介:種子繁殖型イチゴ品種利用の可能性とねらい

丸尾 達・伊藤 善一

著者らは,イチゴ栽培大規模化のボトルネックになる苗生産に関連して,千葉県が中核機関となって実施した「イチゴ栽培を変革する種子繁殖型品種の育成」の研究を分担した.本稿では,研究を通じて「種子繁殖型イチゴ品種」を用いる育苗システムの可能性とねらいについて,現状と課題,可能性について概説した.研究の結果,種子繁殖型のF1イチゴ品種「千葉F-1号」を育成したほか,採種・調整技術,種子選別,種子処理技術も確立した.

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研究の紹介:亜リン酸肥料による養液栽培の病害防除効果について

草刈眞一

作物に対して亜リン酸の施用効果が注目されている.病害防除効果,作物の生理的活性等,亜リン酸の作物への作用機作が明らかになりつつあが,なかでも,養液栽培における水生菌による根腐病に対して,高い防除効果が得られることから,環境保全型資材としての注目も集まる.養液栽培における亜リン酸の使い方,病害防除のメカニズムをまとめてみた.

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書評:養液栽培の病害と対策 出たときの対処法と出さない工夫

糠谷 明

著者の草刈氏は,1975年には「ミツバ養液栽培と菌核病」という論文を発表しており,養液栽培の病害発生と対策に関する研究の第1人者である.本書は,多数の論文や講演会での情報を1冊の本にまとめられたもので,養液栽培関係者の病害防除のバイブルとなるであろう.

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連載~これからのビジネスモデル~:ブルーベリー「アクアポット栽培」を核にした広域連携型ビジネスモデルの展開III 観光農園編

嶋本久二

ここでは「アクアポット栽培」を核にした,ブルーベリーの生産物・加工販売,観光農園事業の展開における観光農園の事例として,三重県津市の㈱白山電器(猪の倉温泉)の取り組みを紹介する.

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新製品の紹介:通信システム搭載.養液&灌水制御システム

谷本暁彦

弊社は,ハウス用換気システムや環境制御システムの製造・販売において,「換気王」シリーズを中心にこれまで多くの実績をあげてきたが,10年ほど前から,養液栽培や養液土耕の給液制御システムの開発に取り組み,これまでに「養液王100」,「養液王300」,「養液王500」などの制御盤や,これを利用した給液システム「しずく栽培システム」は開発・販売してきた.今の時代のニーズにマッチした,通信システムを搭載した新しい養液&潅水制御システムを発売したのでその概要や特徴について紹介する.

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新製品の紹介:エコカルチャー 環境にやさしい養液栽培 「ピュアキレイザー」

仲田一秀

ここでは,培養液除菌のために農薬や肥料の節約が可能で,収穫量アップや品質向上,培地耕では連絡障害の抑制や培地連用が可能な,水処理装置「ピュアキレイザー」を紹介する.

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特集:施設園芸における光利用

後藤英司

光は光合成と光形態形成に不可欠であり,含有成分の制御や着色にも有用である.施設環境を考えるときには,気温に関心が持たれるが,気温を規定しているのは日射である.ここでは,施設園芸における光利用について,高品質の作物を生産するための制御技術を紹介する.

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特集:人工光源

後藤 英司,石神 靖弘

施設園芸では,蛍光ランプ,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプ,白熱電球などが使われているが,最近ではLEDなどの新光源の導入が検討されている.ここでは,それぞれの光源の特徴と今後の動向について解説する.

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特集:緑色光照射による病害防除技術

工藤りか

緑色光を植物に照射することにより病害を防除できることを見出し,イチゴ炭そ病をはじめとする各種植物病害に対して防除効果があることを明らかにした.さらにイチゴ栽培における緑色光照射による新たな効果として,生育促進や果実肥大,ハダニ防除など営農的なメリットを見出した.

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特集:「光と園芸シンポジウム」から見る研究の動向

福田直也

2009年11月16~18日まで,茨城県つくば市にある国際会議場「エポカルつくば」において「光と園芸」シンポジウムが開催された.海外32カ国から約90名,国内参加者をあわせると200名以上が参加し,盛大に開催された.ここでは,園芸作物生産に必要な「光」について,国際的な研究の動向を紹介する.

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質疑応答:固形培地耕を行っています.以前は培養液をかけ流し方式で給液していましたが,排液を再利用することにしました.しかし,生育が除々に悪くなってきています.原因は何でしょうか?

本会運営委員

排液を循環利用すると,条件によっては生育が悪くなる.原因として,培養液中の肥料成分バランスの乱れ,生育阻害物質の蓄積,病原菌の蔓延が考えられる.これらの要因について詳細に解説する.

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連載ーやさしい環境計測ー:環境計測の基礎知識

岩崎 泰永

作物の栽培環境を適切に制御することは,農業技術の基本である.ここでは,新しい連載企画として,環境計測の基礎知識について,できるだけやさしく,かつ実用的な観点から解説することとした.第1回としては「温度」の計測についてとりあげる.

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