日本養液栽培研究会

ニュースレター2号(2022年9月)

論文紹介

農業食料工学会(旧農業機械学会)および生態工学会発行の学術雑誌から最近の話題をピックアップしました.
大阪公立大学大学院農学研究科 廣常花奈


【紹介する論文タイトル】ワサビ稚苗の生育に及ぼす気温の影響

 論文著者:奥岡佳純,貫井秀樹,久松奨,馬場富二夫,片井祐介,大石直記,谷晃

 雑誌名:Eco-Engineering(生態工学)Vol.34,No.1(2022)

〔要約〕

 安定したワサビの周年生産するために,苗の生育に最適な明期/暗期温度条件を明らかにした.気温が高温になるほど光合成速度が低下し,生育が落ちたが,暗期を低温にすることで生育悪化が改善されることがわかった.適温は概ね昼温15~20℃と夜温15℃の組み合わせと考えられた.

【紹介する論文タイトル】トマト個体群を対象としたつり下げ型多元的植物生体画像情報計測ロボットの開発-仕様と動画取得安定性の評価-

 論文著者:加納多佳留,戸田清太郎,海野博也,藤内直道,仁科弘重,高山弘太郎

 雑誌名:Eco-Engineering(生態工学)Vol.34,No.2(2022)

〔要約〕

 複数種類の生物画像情報が取得可能な吊り下げ型ロボットの実証実験を太陽光植物工場で行った.このロボットは同時に継続的なカラー画像,Chl 蛍光画像および植物全体画像の安定した取得が可能であり,これらの画像を解析することで生育状態を診断する事が可能になると期待される.

【紹介する論文タイトル】促成栽培イチゴの生育診断に資する生体計測手法-若葉観測に利用可能な気流強度-

 論文著者:坪田将吾,難波和彦,深津時広,内藤裕貴,山田哲資,太田智彦

 雑誌名:農業食料工学会誌Vol.84,No.4(2022)

〔要約〕

 イチゴの生育診断に重要な若葉を気流で露出させて画像観測することを想定し,葉の物理特性を調べて利用可能な風速範囲を考察した.葉身が受ける風荷重,葉柄の曲げ応力,ヤング率,曲げモーメントを求め,これらの結果からモニタリングには株の上方からの風速8m/sの風が適していると考えられる.

【紹介する論文タイトル】太陽光植物工場におけるマルチオペレーションロボットの開発
-収穫時間短縮のためのキュウリ収穫ユニットの開発-

 論文著者:小澤京平,上加裕子,有馬誠一

 雑誌名:関西農業食料工学会会報 第131号(2020)

〔要約〕

 キュウリの収穫時間を短縮するために,走行ユニットを2台搭載して両側の栽培ベッドから収穫が可能となったキュウリ収穫ユニットの有効性を検証した.新しい収穫ユニットは従来に比べて果実を8本収穫する時間を約270秒短縮できる見込みがある.

【紹介する論文タイトル】太陽光植物工場におけるマルチオペレーションロボットの開発
-機械学習を用いたトマト果実検出における背景削除画像への適用-

 論文著者:大畑秀平,有馬誠一,上加裕子

 雑誌名:関西農業食料工学会会報 第131号(2020)

〔要約〕

 トマトの収穫を自動化するため,機械学習による果実検出方法を検討した.三次元情報を用いた背景削除を行うことで,農園ごとに再学習する必要がなく,果実検出率も向上することが本研究で示された.